
組み込みエンジニアの採用が難しい背景には、複数の構造的な要因があります。
① IT人材全体の深刻な不足
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2030年までに最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されています。DXの推進や生成AIの普及でIT市場は拡大していますが、人材供給が追いついていません。
データで見る採用難:
・ITエンジニアの転職求人倍率:11.6倍(2024年12月時点・レバテック調べ)
・情報処理・通信技術者の有効求人倍率:2.75倍(全職種平均1.20倍の約2.3倍)
・組み込みエンジニアを含む製造技術者は「超売り手市場」が継続
② 専門性の高さと育成の難しさ
組み込みエンジニアは、ソフトウェアだけでなくハードウェアの知識も必須であり、ほかのIT職種と比べて専門性が非常に高い職種です。
求められるスキルセット:
・C言語/C++のプログラミング
・RTOS(リアルタイムOS)の理解
・電気回路設計・通信プロトコル
・AI/IoT関連の最新技術
未経験者が即戦力になるのは難しく、育成には相当な時間とコストがかかります。即戦力採用に頼らざるを得ない企業が多く、限られた人材の奪い合いが激化しています。
③ Webエンジニアへの人材流出
リモートワークの普及やスタートアップの増加を背景に、Web系・クラウド系エンジニアの人気が高まっています。組み込み開発はハードウェア連携が前提のためフルリモートが難しいケースが多く、柔軟な働き方を求める若手がWeb系へ流れています。
組み込みエンジニア平均年収約470万円
Web系エンジニア平均年収約520〜600万円
クラウド系エンジニア平均年収約550〜650万円
④ フリーランスへの転向
フリーランスの組み込みエンジニアの月単価は50万〜85万円。正社員の給与を上回るケースもあり、スキルの高いエンジニアほど独立する傾向があります。各社がエンジニアの離職防止に努める中、条件面での合意が取れないことも採用を困難にしています。
⑤ スキルの見極めが難しい
同じ「組み込みエンジニア」でも、自動車の制御システム開発と家電のファームウェア開発ではスキルが大きく異なります。採用時にミスマッチが起きやすく、書類選考や面接だけでは技術力を正確に判断できないという課題があります。